2026.05.16

「異形部品の面実装化」について
今回は、コラム記事(No.24)「両面リフローはんだ付け工法の取組について」の続編として、1985年~1990年当時におけるスライドスイッチ(以下、スライドSW)の面実装化を中心に解説します。
当時、小型オーディオ製品の制御基板には複数個のスライドSWが使用されていましたが、材質や構造の面でSMD化(表面実装化)へのハードルは非常に高いものでした。当時のリフロー炉は、チップ部品固定用接着剤の硬化炉を転用した「IRパネルヒーターによる上加熱方式」が主流でした。スライドSW本体のPPS樹脂は耐熱性に問題ありませんでしたが、スライダー(つまみ部分)に使用されていたPA66が熱変形し、まるで「餅のように膨らんでしまう」という課題があったのです。
そこで一計を案じ、「テフロンベルト+下加熱リフロー炉」を用いてリフローサンプルを作成しました。加熱方法を工夫すればリフロー化が可能であることをスイッチメーカーのA社に説き、開発協力を依頼したのです。
スライドSWの面実装化においては、スライダーの材質、接点の形状、そして接点グリースの耐熱性がポイントとなりましたが、最大の障壁はやはりスライダーの材質でした。上加熱IRパネルリフロー炉での試験では、接点グリースのドライアップやリフロー後のスライダーの劣化は見られませんでした。つまり、スライダーの熱変形さえ解決できればリフロー化は可能であると確信し、本格的な開発に着手しました。
リフロー化の追い風となったのは、スライダーの部材としてPA66に代わり、耐熱性に優れた「PA46」が採用可能になったことです。PA46製スライダーは、上加熱IRパネルヒーターでも熱変形を起こさず、リフロー実装が可能となりました。当時、PA46は開発・販売されて間もない新素材でしたが、スイッチとしての使用量が限定的であったため、量産への対応もクリアできました。
こうして小型スライドSWのリフロー化を達成しましたが、標準的なスイッチに比べコストが高くなるため、セカンドメーカーへもリフロー化を要請し、互換性(コンパチ型)のあるスライドSWを導入しました。ところが、あるモデルに採用して販売を開始したところ、1~2カ月後に数%という高い割合で接触不良が発生してしまいました。試作段階の信頼性検証では問題なかったものの、スライダーの接点材質は同じでも「形状」が異なっていたため、接触圧が不足していたことが判明しました。検証の甘さを痛感した出来事でした。
続いて、ステレオミニジャックやボリュームのリフロー化も推進しました。ボリュームは本体が大きく、材料の耐熱性にも余裕があったため、挿入型リードからSMD型へ形状変更するだけでリフロー化を実現できました。
一方、ミニジャックも同様にSMD型へと変更しましたが、試作・量産確認の段階で端子接続部にはんだクラックが発生しました。原因を調査したところ、φ3.5ステレオミニプラグを挿入したまま放置すると、挿入圧によるストレスが端子部に掛かり続け、接合部が「クリープ破壊」を起こしていたことがわかりました。小型オーディオ製品ではヘッドフォンを挿したままにするケースが多く、対策としてプラグ挿入時でも接合部にストレスが集中しないよう、端子の内部構造を変更しました。これは、「はんだ接合部にストレスを加えてはならない」という鉄則を学ぶ貴重な事例となりました。
今回紹介したスライドSWやミニジャック、ボリュームのリフロー条件は、鉛フリー(Pbフリー)時代にアップデートされ、現在も部品メーカーの推奨条件として納入仕様書などに受け継がれています。また、現在では各種コネクタやソケット、スイッチ類もSMD化が進み、鉛フリーリフロー対応製品として広く普及しています。
当時の開発から生まれたリフロー条件は、今なお形を変えて活用され続けているのです。
(参考:アルプスアルパイン製SSS7シリーズ等の仕様条件より)
関連記事こちらの記事も合わせてどうぞ。
2026.02.14
コラム記事(No.57) 「チップ型電解コンデンサーの開発実用化」について
2026.01.10



