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コラム記事(No.47)「電気製品の市場不良」(Ⅲ)について

2025.01.25

電気製品の市場不良(Ⅲ)について

今回はコラム記事(No.6、29)に続いて筆者が経験した電気製品の市場不良(はんだ付け部の不良)について説明します。特に、回路基板の昇温検証不足と使用はんだ合金の融点に起因する市場不良です。

 

①カーステレオのフロント基板のディスプレー不点灯

電機メーカーに在籍時の1987年頃、カーステレオがアリゾナ砂漠にて使用され、フロントパネルに不点灯が発生しました。不具合基板を観察したところ、リフローはんだ付けした抵抗チップが落下していました。当時の製品化時の試作ステップでは当回路基板は100℃程度まで昇温することは把握してはいましたが、アリゾナ砂漠の使用環境までは想定していませんでした。最悪の使用環境を想定した基板の昇温検証を十分に実施していないこと及びチップ抵抗の定格容量の不備が要因と考えられます。使用はんだペーストはBi8%含有のSn46-Pb46-Bi8(固相線温度約175℃、液相線温度190℃)です。

アリゾナ砂漠の使用環境において、長時間駐車するとダッシュボードや外付けのカーステ本体がかなり昇温して、カーステのスイッチオンにすると抵抗チップ部品接合部が使用はんだの固相線温度を超えてしまい振動によりチップ部品が落下したものと考えられます。このカーステレオは外付けタイプのためより昇温しやすいことも影響していると考えられます。

当時、1980年代後半には小型電気製品にリフローはんだ付け工法が多用され、狭ピッチ部品のブリッジ対策としてSn46-Pb46-Bi8はんだ使用使用されました。このはんだは固相線温度~液相線温度に開きがあることから徐々にはんだ粒が溶融凝集するためブリッジを抑制する働きがあります。Sn-Pb共晶はんだでは、はんだ粒が一気に溶融して温度の高いリードにはんだが凝集するのでブリッジとなり易いです。当時はメタルマスクや印刷技術が低レベルであったのでこのペーストはんだは重宝しました。実際には0.5mmP-QFPなどのリフローはんだ付けにおいてQFPパッドに一文字印刷や個別印刷で使用され、当時、A社、B社にて採用していました。この合金のはんだペーストはC社から発売されましたが、Bi含有が嫌われて広くは普及しませんでした。

 

②高速道路の非常電話の表示灯の不点灯

D社在籍当時の2010年頃に営業から高速道路の非常電話の表示灯が不点灯となりその基板が送られてきました。この基板を観察したら、大型のチップ抵抗が外れていました。表示灯を設置後1~2カ月で発生したとのこと。この基板では低融点はんだ(Sn-58BiST139LT141℃)を使用していました。また、FR-4基板の変色具合から推測すると動作時にはチップ抵抗のはんだ接合部は100℃以上に昇温して、毎日の動作(昼間に充電、夜間に点灯)にて接合部が劣化し、また、反溶融状態となり通行車両の振動により抵抗チップが落下したものと考えられます。低融点はんだを使用した目的は分かりませんが、実使用状態の回路基板の昇温検証不足と使用はんだ合金のミスマッチと考えられます。

以上の様に、試作段階において製品の実稼働状態を想定した回路基板の昇温検証や使用はんだの融点との関係も重要であるという事例でした。今後SDGsの観点から低融点はんだの使用が増加するとみられますが、回路基板の実稼働時の昇温検証はますます重要になると考えられます。

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